今後は何度かに分けて、私自身がこれまで実施してきた研究についてご紹介したいと思います。
まず、スズサイコの送粉生態学的な研究です。こちらは卒論~修論で実施していました。
まずは送スズサイコという種のご紹介。スズサイコはキョウチクトウ科ガガイモ亜科に属する多年生草本植物 (何年も生きる草)で、北海道から九州までひろく分布しています。
もともとは田んぼの畔やため池の堤防などでふつうにみられていたようですが、最近はなかなか見る機会がありません。
それもそのはず、なんと、47都道府県中45都道府県でレッドデータブックに掲載されているほど、全国各地で減少しているのです。
さてそんなスズサイコですが、普通の花と異なる面白い性質を持っております。
なんと、夜に花弁(はなびら)はきれいに開く一方で、昼間になると閉じてしまうのです。
また、花の構造も複雑です。普通の被子植物の花は、花粉という粉状のものがおしべからめしべに運ばれることで、受粉が完了します。しかし、スズサイコを含むガガイモ亜科の植物は、花あたり少数の花粉塊 (文字通り花粉のかたまり) を形成します。花粉塊をつなぐ花粉塊小球は粘着質ですので、花粉塊小球が花粉塊ごと昆虫に運ばれ、花の空隙に差し込まれることで、受粉が完了します。
こう書いてみると、ガガイモ亜科植物の送受粉の仕組みはなかなか複雑です。。。
しかしこうした複雑な仕組みは世界中の植物研究者の興味を引き付けており、実際このような世界中の研究者がかかわって執筆された論文も出版されています。
Ollerton J et al. (2019) The diversity and evolution of pollination systems in large plant clades: Apocynaceae as a case study. Annals of Botany, 123: 311-325.
さて、こうした花粉塊を作り、また昼間は咲かずに夜に咲くという変わった植物であるスズサイコ。どんな昆虫によって送受粉が行われているのでしょうか?普通、花粉を運ぶ昆虫といえばチョウやハチの仲間ですが、これらのうちほとんどの種は昼にのみ活動しているので、夜には活動していません。こうしてみると、とても不思議です。
次回の記事で、その謎に迫りたいと思います。
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